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kgo Orchids Serviceの加藤誠が趣味花「蘭」について語るブログ

蘭科植物のウィルスについて

   

蘭のインターネット販売を本職にして3年が経過します、販売を仕事にすると色々自分が常識と思っていた事が間違っていたり、逆に知られていないケースに出くわします。

「蘭の育て方」のカテゴリーはこういった分野での、私見を述べていく事になります。~蘭の育て方は~です、の様な上から目線の話はしないつもりです。

販売業務に当たって、最も私的には「間違っている」認識と思われるのが、ウィルス(virus)に対する認識では無いでしょうか。

ウィルスとは何か・・・他の生物の細胞を利用して、自己を複製させることのできる微小な構造体・生命の最小単位である細胞をもたない、生物にも非生物にも分類できない生物学的存在です。(Wikipedia からの抜粋)

自己増殖の機能は備えていても、生物の最小単位である細胞を持たず、宿主の細胞に侵入して初めて増殖し、宿主の細胞を乗っ取る存在です。

宿主に侵入していない状態では非生物であり、埃や土壌などに一般的に存在している物質です。

植物の場合、動物と異なり宿主は移動しないので、宿主への侵入経路は、昆虫・樹液・カビ・種や花粉など様々です。

蘭科植物に感染するウィルスは30~40程度知られており、研究によって更に増えてきております、またウィルス自体が常に進化しており、現在でも新しいウィルスが発生・発見されている状況です、人間に感染するウィルスと同じですね・・・

蘭科植物で特に知られているのは

CyMV(シンビジウムモザイクウイルス)・ORSV(オドントグロッサムリングスポットウイルス)・CMV(キュウリモザイクウイルス)

この3つ辺りは非常に多くの属に感染する、世界中で蔓延しているウィルスでしょう。

他にも DeMV(デンドロビウムモザイクウイルス)・CalMV(カランセモザイクウイルス)の様に限られた属に発生するものも多く存在しています。

ここまでが座学的知識、気を付けて頂きたいのはCyMV・ORSV・CMV 等は世界中で蔓延しているウィルスであるという点です。

世界中に蔓延しているという状態において、蘭科植物がそれらによって絶滅したか?・・・というとそんな事は起こっていないというのが事実です。

人間に例えるとインフルエンザで人間が絶滅に瀕していはいない、のと同じと考えて良いかと思います。

「宿主を全滅させるような強毒性のウィルスというのは世界中で蔓延はしない」というのが私の持論です、ウィルス自体が滅んでしまうからです。

カランセ(エビネ)には CalMV という固有のウィルスが存在し、ウィルスに弱い蘭だと云われ続けて来ました、それでは何故そんなに脆弱な蘭が日本中に繁栄したのでしょうか?近年生息数が激減しているのは、乱獲・自生地開発・温暖化等の為では無いでしょうか?

「ウィルス防御の為、鋏を消毒する」と言うのは、和洋を問わず常識のように語られていますが、それでは鋏で切り離した株の患部には滅菌処置をやっておりますでしょうか?根が折れた時に消毒をしていますでしょうか?・・・・勿論やられている方もいらっしゃいますでしょうが、大方の方はそんなことはしていないだろうと思います。

コンポストにウィルスが潜んでいるとはお考えにならないのでしょうか・・・自然界では通常、昆虫や土壌(根を通して)から常にウィルスは侵入しており、ウィルスは植物体と共生している、と考える方が常識的ではないでしょうか?

毎年冬にインフルエンザが蔓延している時に、自分はウィルスフリーと思っておりますでしょうか? インフルエンザを発症するか・しないかは宿主の免疫機能が健全に機能しているかどうかで決まると言えます、発症していなければウィルスフリーだと考えるのは間違えだと思います。

植物の世界でも同じです、自生地から引っこ抜かれて、日本の温室の植木鉢に植えられた時点で、植物は大きなフラストレーションを感じている筈です、当然免疫力も低下している筈です、一刻も早く自生地の環境と同じ位植物にとって快適な環境を用意する事が、病気に対する最も重要な対策だと思います。

勿論、ウィルスモザイクが発生した株は隔離するのが鉄則ですが、貴重な個体などは手を尽くして植物体の回復を待った方が賢い対応だと思います・・・勿論手のつくしようも無いほどになってしまった株は処分するしかないと思いますが、そんな状態ですと放っておいても大体において枯れ死します。

免疫力の強い強健な個体はウィルス病を発症しないだけで、殆どがキャリアーです。逆に性質の弱い個体はちょっとした環境変化によってすぐにウィルス斑を出し、枯れ死に至ります、性質の弱い個体とはそういう物だと思います。

最近、見るからに健全な株をお送りして、受け取り者がウィルスチェックをしたら陽性反応が出たから返品したい、と言うケースが度々発生します、健全に生育している株に対して何故ウィルスチェックをするのか私には理解できませんが、外から株を持ち込んだ時点で自分の温室はウィルスフリーだと思わない方が良いでしょう、本当にウィルスフリーをお望みならば、無菌室で播種し育て、直接手で触らず、無菌室から出さないくらいの覚悟が必要だと思います・・・そんな風に育てて楽しいですか?

以上、私のウィルスに対する考え方を述べて来ました、かなり常識からかけ離れた事を言っている、とお感じになった方も多いのではないでしょうか?

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